
りんごの“蜜”ってなに?
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りんごを切ったとき、芯のまわりに透明~黄色がかった部分が見えることがあります。「わぁ、蜜入りだ!」とちょっとうれしくなる瞬間ですね。
でも、こんな疑問を持ったことはありませんか?
☑蜜っていったい何?
☑あの部分って甘いの?
☑逆に、蜜がないとハズレ?
☑時間が経つと蜜が消えるのはなぜ?
今日は、そんな“蜜”にまつわるモヤモヤを一つずつ解消していきます。
蜜の正体は「ソルビトール」
りんごの蜜とは、果肉の細胞のすき間にたまった“ソルビトール”という糖アルコールの一種。
ソルビトールは、光合成によって葉で作られ、果実内で果糖などに変換されるはずの成分です。
ところが、秋になってりんごが完熟してくると、糖の変換スピードが追いつかなくなり、変換されずに余ったソルビトールが果肉内にとどまります。
それが液体のまま、細胞間に“にじむ”ようにたまり、蜜のように見える現象が起こるのです。
蜜=甘い?と思いきや…
実は、蜜そのものはそれほど甘くありません。
見た目に反して、ソルビトール自体はほんのりとした甘みしかないため、「蜜の部分だけが特別に甘い」というわけではないのです。
ではなぜ“蜜入り=甘いりんご”と感じるのでしょうか?
それは、蜜ができるほど完熟しているという証だからです。
りんご全体がしっかり成熟していて、甘さがのっている状態のときに蜜も入りやすくなるのです。
蜜がない=ハズレなの?
決してそんなことはありません!
蜜の入りやすさは品種によって大きく異なります。
「ふじ」や「ぐんま名月」は蜜入りしやすい一方で、「ジョナゴールド」や「紅玉」などは完熟していても蜜が入らないことが普通です。
また、収穫直後には入っていても、時間が経つと見えなくなる(=果肉に吸収されてしまう)こともあります。
つまり、蜜が見える・見えないは味の良し悪しとは別なのです。
蜜は時間とともに消える?
はい、これは事実です。
りんごを貯蔵すると、蜜の部分はやがて果肉に吸収され、見た目ではわからなくなります。
これは、りんごが呼吸を続ける中で細胞構造が変化し、蜜の主成分であるソルビトールが周囲の果肉に徐々に移動・拡散していくためです。
見た目からは消えても、しっかり甘さののったりんごもたくさんあるのです。
保存中に蜜の部分が褐変(茶色くなる)することもありますが、これはりんごが呼吸し続けている証拠。
気になるようであれば、その部分だけを避けて食べていただければ問題ありませんが、苦味を感じることもありますので、その際はご遠慮なくお問い合わせください!
まとめ
- 蜜の正体はソルビトールという糖アルコール
- 蜜がある=甘いのではなく、蜜ができるほど完熟しているというサイン
- 蜜がない=ハズレではなく、品種や保存状態による
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蜜は時間が経つと消えることがある
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見た目よりも“食べた時のおいしさ”が大切!
蜜は「見た目のご褒美」、でもりんごは中身で勝負!
蜜入りりんごは見た目にもワクワクするものですが、それがすべてではありません。
蜜がなくても、品種本来の味わい・育った環境・完熟のタイミングなどで、最高に美味しいりんごはたくさんあります。
そのりんごの持ち味を、まるごと味わっていただけたら嬉しいです。